2014年4月に撮った写真とほとんど同じであるが、空を横切る2本の電線が気になり、撮り直しをしようと立ち寄ってみた。
ところが、以前撮った場所には先客の撮り鉄がいて、そこはスペースも限られているので、しかたなくずっと下がって立つ。離れた分、望遠レンズの焦点距離も前回の約200mmから約350mmに伸びている。その圧縮効果で桜の密度が濃くなり、結果オーライなのであった。
それにしても、2014年の写真には「長駅は至って静か」とキャプションを入れたが、2022年はキハ40が入線したこともあってか、沿線では多くの撮り鉄の姿を見かけ、長駅も常に数人の撮り鉄が集まっていた。
午後も遅くなると、下り列車が順光となる。そこで、長駅の播磨横田側から下り列車の発車シーンを撮る。駅の周囲にはまだ数人の撮り鉄がいたが、みな桜の周囲で構えていたので、ひとりゆっくり撮影に勤しむ。
翌日の早朝、かつての交換施設の名残の旧ホームで上り列車を待ち受ける。駅舎のある現ホームにはまだ7時前だというのに通学生の姿が見える。
と、若い作業服姿の男性が踏切を小走りに渡ってくるのが目に入った。カメラを手にしているようで、撮り鉄かな?と思ったら、旧ホームの桜の合間からひょっこり現れて、面食らったような顔をしている。「おはよう」と挨拶するが返事はなく、なんだ愛想ないなと思いながら一緒に撮影する。まあ確かに早朝で誰もいないつもりが先客がいて面白くなかったかも知れない。撮影を終えると、言葉を交わす間もなく彼はまたそそくさと駆けていってしまった。
次の下り列車は昨日の夕方撮った踏切から狙おうと決めていた。ところが、なんとそこには先ほどの彼が陣取っているではないか。なるほど、今度は自分が先回りしようと走ったのか。ちょっと苦笑いしながら「先を越された!」と声をかけると、ばつの悪そうな顔で振り向く。その様子に悪気はなさそうで、「通勤前に撮り鉄?」と尋ねる。予想どおり近所に住む彼は通勤途中に立ち寄ったそうで、「これで3日連続です」とのこと。勤務地が遠距離なので、6:57発のこの列車を撮ったら出勤しないと間に合わないという。撮影後、出勤する彼に「気をつけて」と声だけかけて見送る。
また前日の話に戻るが、長駅から播磨下里側へ少し歩き、これまで何回も通った大歳神社の近くへ。大歳神社には既に二人、三脚を立てる姿が見えて、本当に2022年は撮り鉄が多い。
でも、今回の目的は大歳神社だけではなく、もう少し長駅側の小さな祠のそばに立つ桜の木だ。まずはその桜が大きく二股に分かれた間から、大歳神社の桜を望む構図とするが、画面の左側にもやもやと雑多な枝が入ってしまう。まさか折るわけにはいかないのでそのまま撮影したが、やはり気にはなる。
そして翌日の早朝、長駅で通勤途中の撮り鉄と別れたあと、再び祠の桜へ向かう。祠の横には車が停まっていて、男性がカメラをセッティング中だ。おやおや、ここでも被るかと「撮り鉄ですか?」と声をかけると、怪訝な顔をされる。聞けば撮り鉄ではなく「単に桜がきれいだから寄ったんです」とのこと。確かに最初にやってきた下り列車にカメラを向ける様子もなく、見送っていたのであった。
彼のカメラはこちらと同じEOS R5だったので、しばしカメラ談議。「新機種が出るたびに値段が上がって、R3には手が出せない」と言うと、「そんなこと言って、R1が出たら、すぐ飛びつくんでしょ」なんて軽口をたたきあう。
ここでのメインイベントは、順光となる次の上り列車で、桜全体を入れる構図で構える。その構図では画面左上に3本の太い電線が入ってしまうのが気になったが、そのまま撮影。ただ、写真にしてみるとどうもうっとおしいので、トリミングしてカットした。そのために桜も全体は入りきっていない。電線ばかりにこだわって、撮り鉄もややこしいなと言われそうだが、やはりトリミングしたほうがすっきりした感じだ。トリミングはプロでも賛否が分かれるが、私は躊躇なくトリミングするほうだ。だからこそ画素数の多いEOS R5にしたのである。
ところで、桜の根元が大きく二股になっているのがおわかりだろう。前日はその股の間からカメラを構えていたわけで、傍からは、これまたややこしそうな人物に見えたに違いない。
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